電気工事の単価相場|地域・工種別の人工単価とBtoB案件の値付け

電気工事の単価設定は 「相場 × 自社の固定費」 で決まります。相場より低すぎれば赤字、高すぎれば失注。多くの中小電気工事業者が「相場が分からないから何となくの単価で受注している」状態にあり、結果として粗利が薄くなったり、機会損失が発生したりしています。
本記事では地域・工種別の人工単価相場と、BtoB案件で値崩れしない値付けの考え方、値下げ要請への対応パターン、単価表のデータベース化まで、自社の単価精度を上げるための実務情報を体系的に解説します。
人工単価の相場(2026年4月時点)
人工単価とは「電気工事士1人が1日働く労務費」のこと。地域・経験年数・工事内容で変動します。直近の労務単価実勢ベースで、相場の中央値は以下のとおりです。
| 役割 | 首都圏 | 関西圏 | 地方都市 |
|---|---|---|---|
| 第二種電気工事士(一般) | 22,000〜28,000円 | 20,000〜25,000円 | 18,000〜23,000円 |
| 第一種電気工事士 | 28,000〜35,000円 | 25,000〜32,000円 | 22,000〜28,000円 |
| 主任技術者・現場代理人 | 32,000〜45,000円 | 30,000〜40,000円 | 26,000〜35,000円 |
| 高所作業(高所作業車・足場) | 35,000〜50,000円 | 32,000〜45,000円 | 28,000〜38,000円 |
| 補助作業員 | 15,000〜20,000円 | 14,000〜18,000円 | 12,000〜16,000円 |
元請けからの下請単価表は これより15〜25%低い ことが多く、直需を増やさないと利益率が伸びません。
これらの単価は「直需案件」のものであり、ゼネコン下請けの単価表とは異なります。下請けに依存している業者ほど、単価交渉の余地が小さくなる傾向があるため、直需開拓と並行して単価適正化を進めることが重要です。
工種別の標準単価(材料費別)
工種ごとの単価相場は、地域差より「工事の難易度」による差が大きくなります。標準的な工種の単価感は以下のとおりです。
| 工種 | 1箇所/1台あたり標準単価 |
|---|---|
| コンセント増設(既存回路から) | 8,000〜15,000円 |
| コンセント増設(専用回路) | 20,000〜40,000円 |
| LEDダウンライト交換 | 4,000〜8,000円 |
| 蛍光灯→直管型LED交換 | 3,000〜6,000円 |
| 一体型LED器具交換 | 8,000〜15,000円 |
| エアコン専用回路新設 | 25,000〜45,000円 |
| 防犯カメラ設置(屋内・配線込み) | 35,000〜60,000円/台 |
| 防犯カメラ設置(屋外・防水処理込み) | 50,000〜90,000円/台 |
| LAN配線(CAT6・1点引き) | 8,000〜15,000円/箇所 |
| 分電盤交換(30A〜50A) | 80,000〜180,000円 |
| キュービクル年次点検 | 50,000〜120,000円 |
これらの単価は材料費別の「労務費+諸経費」の目安です。実際の見積では、材料の仕入価格(変動あり)と現場条件(配線距離・施工時間帯)で調整が必要になります。
単価を決める3要素
単価設定は感覚で決めず、以下の3要素を定量的に整理してから決めます。
1. 自社の固定費から逆算
月の固定費(家賃・人件費・車両費・保険)を把握し、月間稼働日数(22〜25日)で割って 1日あたりの最低単価 を出します。
例:固定費 200万円/月、稼働 22日/月 → 1日あたり最低 91,000円
営業利益20%確保 → 1日あたり目標 109,000円
固定費には以下を含めます。
- 人件費:自社の正社員給与・社会保険料・賞与
- 車両費:リース・燃料・保険・車検
- 事務所家賃:自宅兼用なら家事按分
- 通信費:携帯・インターネット・クラウドサービス
- 保険料:賠償責任保険・労災・火災保険
- その他:会計ソフト・税理士費用・各種会費
これらを合計した月額固定費を、稼働日数で割れば「赤字にならない最低単価」が算出できます。この最低単価を下回る案件を受注し続けると、稼働しても赤字が積み上がる構造になります。
2. 案件タイプ別の値付け
すべての案件を同じ単価で受注すると、機会損失や採算割れが起きます。案件タイプ別に値付けを変えるのが基本です。
- 緊急対応 … 標準単価 + 30〜50%(夜間・休日対応の付加価値)
- 大口継続案件 … 標準単価 - 5〜15%(年間契約での値引き)
- 新規スポット … 標準単価通り
- 競合多数の入札 … 自社の最低単価近辺で勝負
緊急対応は「他社では対応できない時間帯」が付加価値となるため、強気の単価設定が可能です。逆に大口継続案件は、安定収入の対価として若干の値引きを提供することで関係維持を図ります。新規スポットは値引きせず、自社のサービス品質で勝負する姿勢が、長期的な単価維持につながります。
3. 競合比較
近隣業者の単価をリサーチします。マッチングサービスでの応募状況・公開見積から、競合の単価帯が見えてきます。
具体的なリサーチ方法は以下のとおりです。
- マッチングサービスでの応募業者数と落札価格を観察
- 同業者団体(組合)の懇親会で単価感を情報交換
- OFFICE110などの相場メディアで業界全体の価格レンジを確認
- 元請けの下請単価表から、直需単価との差を逆算
競合より15〜25%高い単価設定でも、「品質・対応の良さ」で差別化できれば受注可能です。安易に競合と同じ単価に下げるのではなく、価値の根拠を明示することが重要です。
値崩れを防ぐ4つの工夫
単価を維持しつつ受注率を確保するには、以下の4つの工夫を組み合わせます。
工夫1:「単価」ではなく「価値」で説明
「うちは平均より高い」ではなく、価格差の根拠を提示します。
- 保証期間が長い:施工保証1年が業界標準なところを5年保証で差別化
- 現場代理人が常駐する:大規模工事で他業者と差別化できる対応力
- 夜間でも翌日対応できる:緊急時のレスポンス体制
- 施工後の定期点検が無料:アフターサービスの手厚さ
これらをプレゼン資料・見積書に盛り込めば、価格より価値で選ばれる業者になれます。
工夫2:オプション提案で客単価を上げる
メイン工事のついでに付帯工事を提案します。コンセント増設の現場で LED化提案 を1件加えるだけで客単価が30〜50%上がります。
オプション提案のポイントは「同時施工なら割安になる」ことを明示すること。「別途発注より15万円安くなる」のような具体的な提示が、お客様の意思決定を後押しします。
工夫3:保証・アフターを有償化
施工保証1年は標準ですが、有料の延長保証や定期点検サービスで継続収入を作ります。
- 5年延長保証 +5万円:機器付き工事の延長保証オプション
- 年次点検サブスクリプション 月3万円:年12回の現地確認+緊急対応含む
- 緊急対応24時間契約 月1万円:故障時の即時対応保証
これらの継続収入は、新規工事の波があっても経営の安定基盤になります。
工夫4:撤去・処分費を分離計上
「廃棄物処理費」を見積に明記しておくと、後から発生する産業廃棄物処理費を別途請求できます。「一式」に含めると赤字要因になります。
特にPCB含有機器・水銀灯などの特殊廃棄物は、処分費が数万〜数十万円規模になるため、見積段階で別項目として立てておくことが重要です。
値下げ要請への3つの対応パターン
「もう少し安くならない?」という値下げ要請は、ほぼ全ての案件で発生します。安易に値下げに応じると粗利が崩壊するため、以下の3パターンで対応します。
パターン1:項目を減らして対応
「総額を下げるなら、◯◯の保証を外す」「◯◯部分をお客様支給にする」など、条件を変える ことで価格を下げます。
例えば「保証年数を5年から1年に短縮するなら ◯万円安くできます」のような提案。お客様が「保証は1年でいい」と判断すれば、業者側の負担も軽くなり、Win-Winの値下げになります。
パターン2:時期・タイミングで調整
繁忙期は満額、閑散期は若干の値引きで稼働率維持します。
電気工事業の繁忙期は3〜4月(年度切替)と11〜12月(年末駆け込み)。閑散期の6〜8月は単価を5〜10%下げてでも稼働率を維持する方が、固定費回収の観点で合理的です。
パターン3:割引せず断る
赤字案件は受注しても疲弊するだけ。断る勇気 も経営判断のうちです。
「今の単価でないと対応できません」と明確に伝え、それでも断られるなら他社に流す。1件の値引き受注で長時間労働になるより、適正単価の案件に集中する方が、長期的に経営が安定します。
単価表をデータベース化する
属人的な値付けは、担当者が変わるたびに価格がブレます。下記をスプレッドシートで管理するだけで、社内の単価精度が安定します。
| 列 | 内容 |
|---|---|
| 工種 | LED交換・コンセント増設など |
| 規模 | 1箇所〜100箇所超 |
| 標準単価 | 自社で出している中央値 |
| 最低単価 | 赤字にならないライン |
| 過去事例 | 直近10件の見積額 |
| 値引き上限 | 何%までならOKか |
半年に1回はデータを集計し、市場相場との乖離を確認します。
データベース化のメリットは、以下の3点です。
- 若手社員でも一定品質の見積が出せる
- 過去事例から類似案件の単価を即引き出せる
- 市場相場との乖離を定量的に把握できる
特に若手社員が見積を担当する際、ベテランの暗黙知に頼らずに済むため、属人化リスクが大きく下がります。
まとめ|単価は「相場 × 自社価値」で決める
業界相場を知らずに値付けすると、安値で受注しすぎて利益が出ない or 高値で出して失注ばかり、のどちらかに陥ります。
- 自社の固定費から最低単価を算出し、相場と比較
- 案件タイプ別(緊急・大口・新規・入札)で値付けを変える
- 値崩れを防ぐ4つの工夫(価値訴求・オプション・継続契約・処分費分離)を実施
- 値下げ要請には3パターンで対応し、赤字案件は断る勇気を持つ
自社の固定費・稼働日数から最低単価を算出し、相場と比較しながら 値付けの根拠 を持つことが安定経営の第一歩です。単価表のデータベース化で属人化を防げば、組織として継続的に単価精度を高められます。



