オフィスのLAN配線工事費用|CAT6/CAT6A別の相場と注意点

オフィス移転・増床・レイアウト変更時に必ず発生するのがLAN配線工事です。CAT6・CAT6A・光ファイバーといった配線種別と、施工方法(露出 / OAフロア下 / 天井裏)によって費用が大きく変わります。
本記事ではオフィスのLAN配線工事について、配線種別ごとの費用相場、施工方法の選び方、業者発注時の確認ポイントまで、施設管理者・IT管理者向けに体系的に解説します。
LAN配線工事の費用相場
LAN配線工事の費用は「箇所数(情報コンセントの数)」「配線種別」「施工方法」で決まります。直近の見積実績の中央値は以下のとおりです。
| 配線種別 | 1点あたり費用相場(OAフロア下) | 1点あたり費用相場(天井裏配線) |
|---|---|---|
| CAT5e | 6,000〜10,000円 | 10,000〜15,000円 |
| CAT6 | 8,000〜13,000円 | 12,000〜18,000円 |
| CAT6A | 12,000〜18,000円 | 16,000〜25,000円 |
| 光ファイバー(マルチモード) | 25,000〜45,000円 | 35,000〜60,000円 |
上記は1点引き(1か所のコンセントへの単線配線)の場合。情報コンセント本体・パネル・配線資材を含む。
20席のオフィスで全席にLAN配線を引く場合、CAT6で20点 × 13,000円 = 約26万円。これに分電盤側のスイッチングハブ設置費・無線AP設置費が加わると、全体で50〜80万円規模になります。
配線種別の選び方
配線種別の選択は、現状のネットワーク速度・将来の拡張性・予算で決めます。
| 規格 | 最大速度 | 用途 | 推奨環境 |
|---|---|---|---|
| CAT5e | 1Gbps | 一般オフィス(〜100Mbps回線) | 既存設備の流用 |
| CAT6 | 10Gbps(55mまで) | 一般オフィス(1Gbps回線) | 新規施工の標準 |
| CAT6A | 10Gbps(100mまで) | 高速通信が必要な業種 | サーバールーム接続 |
| 光ファイバー | 10Gbps以上 | 拠点間接続・大規模ネットワーク | データセンター・拠点間 |
新規施工ならCAT6が標準。CAT5eは既存配線の流用以外では選ぶべきでない(数年後に必ず帯域不足になる)。
CAT6Aは「将来10Gbps化する可能性がある」「動画編集・大容量ファイル転送が頻繁」といった業種で選びます。一般的なオフィスならCAT6で十分です。
施工方法の選び方
LAN配線の施工方法は、オフィスのフロア構造で決まります。
OAフロア(二重床)の場合
最も施工が容易で安価。OAフロアの床下に配線を通し、必要箇所に情報コンセントを立ち上げます。
- メリット:配線変更が容易、コストが安い
- デメリット:OAフロア未導入の場合は施工不可
天井裏配線の場合
OAフロアがないオフィスでは、天井裏に配線を通し、壁伝いに情報コンセントへ降ろします。
- メリット:見た目がスッキリ
- デメリット:費用が高い、配線変更の都度天井を開ける必要
露出(モール)配線の場合
最安だが見た目が悪く、業務オフィスでは避けることが多いです。
- メリット:最安、施工が早い
- デメリット:見た目が悪い、配線が傷つきやすい
OAフロア導入済みオフィスならOAフロア下、未導入なら天井裏配線が標準です。
価格を左右する4つの要因
LAN配線工事の見積金額を左右する主要因は以下の4つです。
- 配線距離 1点あたりの配線距離が長くなるほど、ケーブル材料費と工数が増えます。10mごとに数千円増、100m超では特殊配線(CAT6Aや光ファイバー)の検討が必要。
- 施工時間帯 テナントの営業中は工事ができないため、夜間・休日施工が標準。深夜・休日割増で人件費が25〜40%増。
- 既存配線の撤去 既存LAN配線の撤去・処分が必要な場合は別途加算。1点あたり3,000〜5,000円。
- スイッチングハブ・パッチパネルの設置 配線先のラック工事・パッチパネル取付・スイッチングハブ設置が含まれているか。別工事だと連携リスクがある。
これらを業者の現地調査時に明示しておけば、見積精度が大きく上がります。
オフィス移転・増床時の典型的な構成
オフィス移転や増床時のLAN配線工事は、以下の構成が標準です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 情報コンセント | 1席あたり2口(PC・電話)が基本 |
| 配線種別 | CAT6(10Gbps対応) |
| 施工方法 | OAフロア下配線 |
| サーバー室 | CAT6A or 光ファイバーで上位接続 |
| 無線AP | 50〜100㎡に1基 |
| パッチパネル | 配線数に応じたラック設置 |
20席のオフィスなら、上記構成で総額40〜70万円が目安。スイッチングハブ・無線AP本体の費用は別途。
業者発注時の確認ポイント
LAN配線工事の発注時に、業者へ必ず確認すべき項目は以下のとおりです。
- 配線種別:CAT6 / CAT6A / 光ファイバーの明示
- 使用ケーブルのメーカー・型番:パナソニック・パンドウィット等の主要メーカー製を確認
- 施工方法:OAフロア下 / 天井裏 / 露出の明示
- 配線長と経路:1点あたりの配線距離、配線経路図
- 試験方法:施工後の通信試験(ファイバーテスター)の有無
- 保証:施工保証1年以上、配線断線時の対応
試験結果の納品を必ず要求:CAT6施工後はファイバーテスターで通信品質を測定し、結果を納品してもらいます。これがないと、不具合発生時の責任分界が曖昧になります。
業者選びで失敗しないために
LAN配線工事は「電気工事業」と「電気通信工事業」の両方の知識が必要な領域です。業者選定時は以下を確認します。
- 電気通信工事業の登録:500万円以上の工事は許可必須
- 工事担任者の資格:AI・DD総合種など
- 過去の同規模実績:オフィス・店舗の同規模施工実績があるか
- 試験機器の保有:ファイバーテスター・LANケーブルアナライザー
- 賠償責任保険の加入:施工中の事故・施工後の不具合に備える
電気工事業者がLAN配線も扱うケースが多いですが、専門の通信工事業者と比べて試験機器・経験で劣ることがあります。10点以上の規模なら通信工事専門業者を含めた相見積が安全です。
無線LANとの併用設計
近年のオフィスは、有線LAN配線と無線LAN(Wi-Fi)の併用が主流です。それぞれの長所を活かし、業務要件に応じて使い分ける設計が必要です。
有線LANを優先する用途
- デスクトップPC:固定席で安定通信が必要
- 複合機・プリンター:大容量データ転送、IPアドレス固定
- サーバー・NAS:高速・低遅延が必須
- VoIP電話機:通話品質確保のため有線推奨
- 会議室の固定設備:プロジェクター・テレビ会議端末
無線LANを使う用途
- ノートPC・タブレット:席移動が多い従業員
- ゲスト用回線:来客のスマホ・PC
- 倉庫・店舗の業務端末:移動しながら使う
設計のバランス
- 席数の70%は有線、30%は無線:標準的なオフィス
- 席数の50%は有線、50%は無線:フリーアドレス導入企業
- 完全無線:小規模スタートアップ、コワーキング
完全無線にすると同時接続数の制約・干渉問題が出るため、20名超のオフィスでは有線併用が現実的です。
Wi-Fi APの設置基準
- オフィスエリア:50〜100㎡に1基
- 会議室:1室あたり1基
- 倉庫・広い空間:50㎡に1基(障害物多い場合)
- PoE給電:LAN配線で給電し、電源工事を省略
PoE対応のスイッチングハブを使うと、APごとの電源工事が不要になり、コスト・設置位置の自由度が大きく上がります。
セキュリティ要件への対応
LAN配線工事では、セキュリティ要件も同時に検討します。
ネットワーク分離
業務用ネットワークとゲスト用ネットワークを物理的に分離するのが基本。VLAN設定でも論理分離は可能ですが、管理が複雑になります。
- 業務用VLAN:従業員PC、サーバー
- ゲスト用VLAN:来客のスマホ・PC
- IoT機器用VLAN:複合機、Wi-Fi AP管理、防犯カメラ
VLAN対応のスイッチングハブが必要で、業務用と汎用品で価格差があります。
物理セキュリティ
- パッチパネル・ラックの施錠:サーバー室は施錠管理
- 配線の隠蔽:盗聴・改ざん防止
- 不要なLAN口のブロック:使わないコンセントは物理的に塞ぐ
- 入退室管理との連動:認証連動で誰がいつアクセスしたか記録
工事業者選定時のセキュリティ要件
- NDA(秘密保持契約)の締結:施工中に見える機密情報の保護
- 施工担当者の身元確認:協力会社含めた身分証提示
- 工事中の写真撮影制限:撮影前の社内承認
特に金融・医療・法務系の業種では、これらの要件が業者選定の必須条件になります。
オフィス移転・増床時の進め方
オフィスのLAN配線は、移転・増床のタイミングで一気に整備するのが最も効率的です。
計画タイミング
- 移転6ヶ月前:配線業者の選定開始
- 移転4ヶ月前:詳細設計、見積確定
- 移転2ヶ月前:工事着手
- 移転1週間前:通信試験完了
- 移転前日:最終動作確認
設計段階から内装業者との連携が必須です。OAフロアの導入有無、配線経路、電源コンセントとの整合などを早期に擦り合わせます。
まとめ
オフィスのLAN配線工事は、配線種別・施工方法・箇所数の組み合わせで費用が決まります。
- CAT6が新規施工の標準、1点あたり8,000〜18,000円
- OAフロア下配線が最安、天井裏は1.3〜1.5倍
- 試験結果の納品を必ず要求、不具合時の責任分界を明確化
- 通信工事専門業者を含めた相見積で施工品質を担保
- 有線・無線の併用設計とVLANによるネットワーク分離が現代の標準
オフィス移転・増床のタイミングは、将来5〜10年のネットワーク要件を見据えて配線種別を選ぶのが、長期投資効率の観点で合理的です。



